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【虚偽情報拡散事件】主なご質問に対する回答
2019.08.29
1 現在の進捗状況
現在、対象とすべき記事の数が多く、運営会社が海外のため審理に時間を要すると思われる、ツイッター社、フェイスブック社(インスタグラム)に対する発信者情報(IPアドレス、接続日時等)開示仮処分命令申立を行う準備を進めています。また、その他のサイトにつきましても、併行してアクセスログの保全等について要請を行っています。
さらに、一部発信者を特定できたものにつきましては、慰謝料請求や和解交渉を行っています。
2 発信者情報開示請求の対象とする記事の範囲
本件では、ツイッターのみ取り上げても、虚偽情報を拡散するツイートの中に6,000リツイートを超えるものが複数ありますので、これがさらにリツイートされる可能性を考慮すると、10万件を超える情報の拡散があったと思われます。また、その他のサイトにおいても伝播性の高いものが複数存在していますので、これをも考慮すると、拡散をした記事の件数はさらに膨大な数になるものと思われます。
しかしながら、これらの記事全部に対して開示請求をし、責任追及をすることは、事実上不可能です。そのため、開示請求等の対象記事は合理的な範囲に絞ります。
3 今後の進行予定
虚偽情報が広まった令和元年8月17日から3か月(11月16日)までの間に、対象記事のアクセスログの保存手続を終える必要があります。
このことから逆算すると、9月中旬までの間に主要サイトについて発信者情報開示仮処分命令申立て(1回目の裁判手続)を行い、10月中旬ないし11月上旬までの間に、発信者情報消去禁止仮処分命令申立て(2回目の裁判手続)を行う必要があります。
発信者情報消去禁止仮処分命令申立てをしたあと、実際に保存された発信者情報の開示を受けるには、通常民事訴訟を提起する必要があります(3回目の裁判手続)。審理には、どれだけ早くても4か月~6か月程度の時間を要します。
そのため、実際に発信者を特定し、損害賠償請求や刑事告訴を行うのは、今から6か月以上先のことになることが見込まれます。このような、被害者側に過度な時間的、経済的負担を課す現在の法制度は問題であり、今後法改正に向けた活動を行いたいと考えています。
4 今後の情報発信の有無及びタイミング
少なくとも、発信者情報開示仮処分命令申立て等の裁判上の手続をとったとき、また、これらにより一定の成果を得たときには適時に情報発信をする予定です。その他、特に発信すべきと思われる事情が生じたときは、都度情報発信をする予定です。
5 謝罪のご連絡や情報提供のご連絡を頂いている方への返信
特に必要があると思われるもの以外は、原則として個別の返信はしません。
既に当職宛に謝罪メールについては150件程度、情報提供メールについても100件程度のご連絡を頂いているところではありますが(別途被害女性にも謝罪の連絡等がされています。)、これらに対して個別の返信をしていると、本件事件処理が停滞してしまうからです。
6 自発的に謝罪の連絡をした方への配慮
現在発信者の特定作業に時間を割いているため、現時点において、謝罪のご連絡を頂いた方に対し、いかなる対応をするかの方針は決まっていません。
但し、氏名、住所、電話番号等連絡先、自身が投稿した記事を明確にした上で謝罪のご連絡を頂いた方については、当該記事の内容が極めて悪質なものである場合を除き、自発的に謝罪をしたという事情を考慮した上での解決案を提示することを検討しています。
なお、既に記事を削除しているので、自身が投稿した記事を明らかにできないとの連絡も相当数ございますが、これらについても身元を明らかにした上で自発的に謝罪をしたという事情については考慮することを予定しています。但し、投稿した記事を明確にしてご連絡頂いた方と比較して、考慮の程度は下げざるを得ませんので、その点はご了承ください。
7 情報提供をしていただいた方への対応
前記5のとおり、情報提供のご連絡も多数頂いているため、現時点においては特に必要がある場合を除き、個別に返信することは予定していません。申し訳ございませんが、事件処理の効率化を優先していますので、ご理解いただきたく存じます。
また、いただいた情報については事件処理の参考にさせていただきますが、情報提供の対価(経済的対価のみならず、情報公開による対価も含みます。)の支払い等については予定していませんので、あらかじめご了承ください。
被害女性のプライバシー保護の観点のみならず、弁護士法、弁護士職務基本規定、プロバイダ責任制限法4条3項(発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。)等法令に基づく対応ですので、ご理解頂きたく存じます。
8 クラウドファンディングの利用やカンパの募集について
予定していません。
本件では今後、民事事件としては損害賠償請求、刑事事件としては刑事告訴を視野に入れて手続を進めます。しかしながら、必ずしも判決による解決のみを目指すものではなく、例えば自発的に謝罪してきたり、和解を求めてきたりしたような人については、裁判によらない穏当な解決をすることもあり得ます。
他方で、支援者の立場に立って考えた場合、支援の動機として、ただ支援をしたいという人も相当数いるものと思われますが、中には、ひとりでも多くの人に対して責任追及してほしい、和解ではなく全件判決で解決してほしい、ある特定の記事の投稿者に対しては絶対に責任追及してほしい、支援の対価(経済的対価や情報公開による対価)を得たいなど、様々なご要望を持たれる方も含まれることが想定されます。
このような支援者の要望は理解できるものですし、支援を受けるのであればこれらのご要望には真摯に向き合わなければならないと考えますが、反面、このことが事件処理に影響を及ぼしたり、返金トラブルを招いたりするなど、女性被害者にとって全く望んでいない事態を生じさせる可能性があります。
そのため、本件では、女性被害者や当職の判断及び責任の範囲内で事件処理を進めていきます。
以上