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【虚偽情報拡散事件】元市議に対する損害賠償請求事件判決について
2020.08.18
標記事件につき、昨日、慰謝料30万円、弁護士費用3万円の合計33万円の支払いを被告に命じる判決が下されました。
本件では、被告から、原告が多数の加害者から受けた権利侵害行為が共同不法行為であることを前提にしたうえで、その共同不法行為により原告が受けた損害(慰謝料)が、既に一部の加害者から支払いを受けた和解金の額を下回る、したがって、原告の被告に対する損害賠償請求権は弁済により消滅しているから、原告の請求は棄却されるべきであるとの主張がされ、その是非が中心的な争点になりました。
この点について裁判所は、被告が他の者と共同して問題となった記事を投稿した主張・立証がないとして、被告の主張を退けました。被告の主張が認められるとなると、加害者ひとりあたりの責任が希釈化して同種事案の抑止にならないことや(むしろ、大人数で加害行為をした方が責任が少なくなるので、同種事案を助長することになりかねません。)、先に支払った人が損をすることになるため、賠償金の支払いがされにくくなり、被害救済の障害になることからすると、この点に関する裁判所の判断は妥当なものであったと考えます。
他方で、損害額については33万円(慰謝料30万円、弁護士費用3万円)とされました。被告の単独不法行為を前提とするので、この損害額は、被告が投稿した記事についてのみのものとなります。一般論としては、本件が発信者情報開示請求を経ていない事案であることを踏まえても、弁護士費用や訴訟費用で依頼者が赤字になる可能性がある金額です。これでは被害者の泣き寝入りを招いてしまい、相当ではないと思いますので、もう少し高い慰謝料額が認められてもよいのではないかと考えます。
但し、本件における被告の投稿記事は、性質としてはリツイートに近いものであり、原告の人格等をことさらに非難するものではなかったことからすると、市議会議員という当時の被告の立場を考慮しても、今回判決で認められた金額は、現在の同種事案の相場を逸脱するものではないと思われます。他方で、原告の人格等を非難する内容を含むものについては、より高額の慰謝料額が認められる可能性があると思われます。
今後につきましては、謝罪や和解を申し出ている方との間の和解手続を進めるとともに、現在行っている発信者情報開示請求訴訟の結果、発信者情報の開示がされた場合は、随時当該発信者に対する損害賠償請求を行う予定です。この損害賠償請求に際しては、発信者を特定するために要した費用を請求に加える予定です。また、既に発信者を特定しているものの内、和解による解決が困難となった方については、随時損害賠償請求訴訟を提起する予定です。
以上