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Facebookに対する発信者情報開示請求事件に係る判決が判例タイムズに掲載されました
2018.06.17
判例タイムズ1446号109頁に、当職が担当した事件の判例が掲載されました。
Facebookに対する発信者情報開示請求事件の控訴審判決です。Facebook等、いくつかのSNSサイトでは、ある記事を投稿したタイミングではなく、ログイン・ログアウトをしたタイミングでのみアクセスログを記録しています(なお、現在のFacebookは、ログイン・ログアウト時両方のアクセスログを記録していますが、本件事件では、Facebookはログイン時のアクセスログしか記録していませんでした。)。
本件では、①ログイン時のアクセスログが、「当該権利の侵害に係る発信者情報」(プロバイダ責任制限法4条1項本文)にあたるか否か(ログイン時のアクセスログは、他人の権利を侵害する情報の発信をしたときの記録ではないため)、②あたるとして、いかなる場合に「当該権利の侵害に係る発信者情報」と言えるのかが問題となりました。
原審では、①につき、ログイン時のアクセスログは「当該権利の侵害に係る発信者情報」にあたらないとして、原告(当方)の請求を棄却しました。控訴審では、①につき、ログイン時のアクセスログが発信者のものであると証明できる場合は、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に該当するとし、原審の判断を覆しました。しかし、②につき、12日間同じIPアドレスからログインを繰り返していても、ある端末からログインした後に他の端末からログインした場合でも、先にログインした端末についてログアウトとならない(ログインしたままとなる)こと、他の端末からログインした後に先にログインした端末から記事を投稿しても、ログイン記録は残らないことといったFacebookの特性に照らすと、13日前にログインした端末から記事を投稿していないとまではいえないとして、控訴人(当方)の請求を棄却しました。
Facebookにログインするには一定の情報を入力しなければなりません。そのため、アカウントを複数人で共有していることが外形上明らかなどの特段の事情のない限り、たとえ複数の端末から異なる回線を用いてFacebookにアクセスした記録が存在したとしても、これらのアクセスは同一人物によるものと事実上推定されるべきです。本件についても、13日前にログインした端末を管理する人物がアカウント管理者でないことをうかがわせる事情がなければ、「当該権利の侵害に係る発信者情報」に含め、発信者情報の開示が認められるべきであったと考えます。
その意味で、本判決の結論には納得できないものではありますが、控訴審で上記①の判断を得られた点については、意義のある判決だと考え、照会させていただきました。